最近の動向

― 鋭意取材中!!柳原三佳・日本の検視・司法解剖の問題を斬る!―

●警察当局、「自殺者」解剖4.4% 警察当局、「自殺者」解剖4.4% (2010年 7月18日 読売新聞)
犯罪見逃しの要因に  
警察当局が昨年、自殺と判断した死者のうち、死因特定のために解剖したケースは 4・4%だったことが、読売新聞の調査でわかった。統計がないなどとする警察本部 を除く半数が回答した。過去には、解剖していれば犯罪被害者の見落としが防げた ケースもあり、医学検査を尽くさずに自殺と断定する死因判断のあり方が問われそう だ。国内の自殺者の解剖率が明らかになるのは初めて。 読売新聞が全国の取材網を通じ、47都道府県の警察本部に2009年中に把握し た自殺者数とその解剖実績(司法解剖と行政・承諾解剖)を問い合わせた。 それによると、自殺者は計3万2845人。解剖実績を回答した24府県警では、 自殺者数計1万6168人に対し解剖は712件、解剖率は4・4%。死因不明の異 状死の解剖率が先進国最低の約10%だが、自殺者に限るとさらに低くなる。監察医 制度がある神奈川の11・4%が最も高く、平均を上回ったのは栃木、富山など10 県警。 沖縄、広島両県警は解剖率が1%を下回り、鹿児島、宮崎、福岡、愛知の各県警は 1%台。自殺者が多い警視庁や大阪府警をはじめ22都道府県の警察本部は「自殺で ある以上、解剖しない」「統計がない」などと回答。山形県警は「極めて少ない」と した。 警察庁によると、自殺や事故死として処理後、殺人事件などの被害者と判明した 「見逃し」は1998年以降、39件に上っている。

●自殺者」解剖率調査…犯罪発覚「氷山の一角」 (2010年7月18日 読売新聞)
現場の意識改革必要
画像の拡大 自殺を偽装した殺人事件などが後に発覚するケースの多くで共通するの は、解剖や薬物検査など詳細な検査が行われていないことだ。本紙の全国調査で初め て明らかになった自殺者の解剖率は4%余り。警察当局は、遺体の検視と現場の状 況、関係者からの事情聴取を踏まえて死因を判断しているとするが、犯行の手口が巧 妙であればあるほど、無防備と言わざるを得ない実態を浮き彫りにしている。(地方 部 早川悦朗、中部社会部 小川翼)  埼玉県と鳥取県で発覚した連続不審死事件に関連し、解剖や薬物検査をせずに自殺 や事故死と処理されたケースもあった。既に立件された事件では遺体から検出された 睡眠導入剤の成分などが、逮捕・起訴の有力な支えとなった。宮城県警が2000年 8月に自殺と判断して解剖しなかった死者が今年3月、別の事件で逮捕した男の供述 から、絞殺されていたことが判明。県警は検視ミスを認めた。  事件は被害者が相次いだり、犯人が自白したりして初めて表面化することが多く、 ある県警幹部は「発覚は氷山の一角に過ぎないだろう」と指摘する。  異状死の解剖率は、フィンランドやスウェーデンは100%、英米豪が50〜6 0%などで、約10%の日本よりも軒並み高い。自殺に限っても原則、解剖する国が 大半だ。日本の現状は、世界の常識とかけ離れている。  「日本では検視段階で自殺が疑われると、明確な遺書などがないのにもっともらし い理由で済ませる傾向がある。自殺を偽装した殺人を見逃す恐れがあり、詳細な動機 分析もおざなりになる」。法医学者で自殺予防対策に取り組む秋田大の吉岡尚文副学 長は指摘する。  自殺に限らず、家族を失った遺族は解剖に抵抗感を示すことは少なくない。それで も、他の先進国が医学検査をないがしろにしないのは、判断を誤れば死者は報われ ず、遺族の権利や社会の安全にも影響を及ぼすと認識しているためだ。捜査現場に意 識改革が求められている。 警察はなるべく事件を減らしたいと考えてしまう傾向がある。そのため、死因が分か らない死体があった場合、一番いいのは病死にしてもらうことだし、次にいいのは自 殺、事故になることだ。 遺体発見から数時間、せいぜい1日で自殺と判定されることが日本の場合多く、その ため、事件性なしとされて解剖されない場合がほとんどだが、その中に犯罪に巻き込 まれた死体も含まれていたようだ。 他の国では、遺族の感情を考えると、安易に自殺と決めつけない。丁寧に調べる中 で、その一環として解剖や薬物検査もされている。 日本では解剖も薬物検査もしていないので、後になって、事件に巻き込まれたかもし れないと遺族が思っても、後の祭り。警察もそうなってしまうと、知らぬ存ぜぬを繰 り返すので、遺族はさらに被害にあう。そういうケースが日本には大変多いようだ。

 

© 柳原 三佳